新緑の五月も残りあとわずか。梅雨の時期が近づいていますね。
近頃は雨の日グッズも可愛いものが続々と出ていて、
お気に入りの傘とレインブーツさえあれば
機嫌よく過ごせちゃうという女の子もきっと多いことでしょう。
それでもやはり、じとじと雨の降る日は外に出ず家でくつろぎたい
という方に、おすすめの文庫本を紹介します。
宇野千代『色ざんげ』。
恋愛は男と女の駆け引きであり、感覚を頼って駒を進めてゆくしかないのでしょうか。
主人公の洋画家・湯浅譲二は日々狂ったかのようにあくせくと恋愛をしてゆきます。
その結果、さまざまな事情がこんがらがり、収拾がつかなくなり・・・
それでもまだ恋をし、愛を求め、自惚れる心を恥じることもあまりせず。
どんなに頭で考えても仕方のないことで、
心を突き動かすのは、いつだって「会いたい」という気持ちであるように思います。
人はみな孤独であるが故、恋愛をせずにはいられないのかもしれません。
どんな恋愛本や女性誌に書いてあることよりも、
小説の世界に浸り、感じ得たことの方がずっと心に残ります。
わたしが初めて宇野千代さんの作品を読んだのは『おはん』でした。
文庫サイズの限られた頁にぎっしりと埋め尽くされた文字、
一文が長く読点は少ない、しっとりと流れるようでいて熱い情感の込められた筆致が
いたく気に入ってしまい、一息に読み終えると震えながら泣いたのを覚えています。
明治生まれの女流作家の恋愛小説に出てくるのは、
ダンスホールと電報と汽車と。
今の時代に生きていてはおそらく経験できない物事に触れ、味わえるのは
やはり文学の世界のなかでしかないように思います。
絵でも映像でもなく、言葉のみによって想像できる世界。
それはどこまでも際限なくわたしたちの前に広がっています。
雨の止まない夜、眠れないなと思ったら
覚悟を決めて一冊、本を開いてみてはいかがでしょうか。
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