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2011年8月4日木曜日

『永すぎた春』

本日紹介する文庫は、三島由紀夫『永すぎた春』。

優秀な大学の法学部生である郁夫と彼の通う大学の前にある古本屋の娘百子は、
家柄の違いから起こる両家のぎくしゃくとした関係をなんとか乗り越え婚約を果たします。
しかし、そこには郁夫が大学を卒業するまで結婚は待たねばならないという条件がつけられ、
一年三ヶ月という永い間、二人は一緒になることをその日が来るまで我慢するのでした・・・。

婚約という契りを結ぶことで二人の仲は周囲に認められ、
あとはただ結婚までの日々を幸せに過ごせるようにも見えたのに、
そのとき何か物足りなく思う心が二人の心に生まれたのは何故でしょうか?
お互いを想う心は二人だけの秘めごとであったほうがより燃え上がるのかもしれません。
公認の仲となってしまえば周囲の人々は好き勝手に二人を見てああだこうだと言いだすそれは、
幸福な二人の生活の邪魔となりときに危機をもたらします。

三島由紀夫の作品は数々残っていますが、彼の人物を描く巧さにはハッと驚かされます。
人間の細かな行動にまで目を行き届かせその描写によって性格や心情を書き当てる方法が
読んでいるわたしたちの共感を実にうまく得てゆくのです。

そして、夏のこの季節に、ぜひ三島由紀夫を!と思うのは、
彼の作品に出てくる海がとても美しいためです。
読んでいるだけできらきらと輝き波立つ海辺が目の前に広がり、
夏の暑く重い空気をすっと涼やかなものに変えてくれることでしょう。
『潮騒』や『真夏の死』といった名作も、この夏一読の価値あり、とおすすめ致します。

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